IBDP体験記 現役DP生が 国際バカロレア を解説してみた

不定期更新。国際バカロレアについて現役生がぶっちゃけます。

【課題解説】(?) 日本語 A 内部評価:IOA についてもう一回考えてみる。

どうも葉山です。

先日成人の日がありましたね。

葉山が住んでいるところは所謂20の集い的なものを開催するらしいので

今年は振袖など着ず、それらしいことも全くせず、家でぐうたらしておりました。

友人の中には成人の日記念で某ピザ系チェーン店でピザをもらっている人も数名いたようで。

たまたまその店で働いていた経験がある従兄弟に「ゴチです」と送ったところ、

「無料ピザなんだからありがたく頂きたまえ」と返事が来ました。

ですが葉山家にはデリバリーという文明があまり浸透していないため

結局ピザは食せず。食べたかったです。二年後リベンジします。

 

 

さて今回は課題解説コーナー。

というのも、この前後輩と面談したときに日本語Aの「IOA:個人口述」について聞かれまして。

そう言えばそろそろその時期ではと記事を作ろうとしたところ、

 

hayamaibdip.hatenablog.com

 

過去にめっちゃ書いてました。

 

さすが葉山が最も得意とする評価課題だっただけある。

なんなら一番伝えたい「グロ問」の話までご丁寧にされておりました。

こりゃ葉山が再び説明する必要はないやんけ……

 

 

こんな感じで、 グローバルな問題を中心にテクストを選ぶのもありです。

というかその方がやりやすいのでは。

 

【IBDP】 Japanese A の評価項目:IOA(個人口述)って? 高得点を取るコツは? - IBDP体験記 現役DP生が 国際バカロレア を解説してみた

 

 

とか思ったんですけど、読み返しながらこの表記に疑問を抱きました。

グロ問が浮かばなくて苦労しているのに、これを中心にテクストを選べと。

 

 

__何言ってるんだこいつ。

 

 

ということで今回は補足としていろいろと構成の作り方を紹介して、

実際のIOA試験の様子で葉山が覚えていることをざっと書き出してみる回。

これを踏まえて、一度サンプルアウトラインも作ってみようかなーと思ってます。

 

 

 

 

構成の作り方

 

学校でおすすめされていたアウトラインの箇条書き配分ですが、

  • 序論(グローバルな問題説明)×2
  • 本論(文学テクスト説明)×3
  • 本論(非文学テクスト説明)×3
  • 結論(まとめ、比較)×2

というふうになっていました。

ですが葉山には、3つのポイントでうまくバランスを取ることが難しかったので

  • 序論(グローバルな問題説明)×1
  • 本論(文学テクスト説明)×4
  • 本論(非文学テクスト説明)×4
  • 結論(まとめ、比較)×1

で作ってました。

 

加えて、それぞれのまとまりがわかるように、各ポイントの間に一行間を入れてました。

そのほうがパッと見た時わかりやすいからね。

【IBDP】 Japanese A の評価項目:IOA(個人口述)って? 高得点を取るコツは? - IBDP体験記 現役DP生が 国際バカロレア を解説してみた

 

各学校で推奨されているアウトラインの作り方、というものもあるかもしれないので

必ずしも「これに添え!」というわけではないですが、

葉山はこの「1、4、4、1」方式を使っていました。

3つのポイントしかかけないと、どうしても抑えなければならないポイントが入り切らないので。

 

この抑えなければならないポイントというものですが、

葉山が解釈しているもので言うと

  1. 作品体系の理解
  2. 作品の抜粋部分が作品体系とどのように関連しているか
  3. 作品の抜粋部分でグローバルな問題がどのように表出しているか

です。

この通りに書くと確かに「3点」で終わってしまうんですけど、

葉山的には3点目のグロ問関連の話はしっかり示しておきたいので

本文引用を含めた解釈を最低2つは行おうと考えていたらしいです。

(過去のアウトラインがそうでした)(現在はほぼ記憶が抜けている)

ちなみに作品体系がわかりにくいという人は、葉山の前回の記事を参照していただきたいのですが、

超簡略化して説明するなら、主題・テーマ 的なものです。

 

なお、同級生の中には原稿を作って喋るという手法をしている人もいましたが

葉山はあまりこの方法は得意じゃないです。

勿論作って覚えて行ったほうが安心というのは事実ですが、

やはり本番緊張して頭が真っ白になって失敗する、というリスクは十分あるわけで。

この状態で頼りになるのは、自分が作ったアウトラインのみ となってしまいます。

 

そのため、原稿の有無に関わらず、

アウトラインは 見れば話したいことが8割ほどわかる

程度に作り込んでおくことをお勧めします。

こうすれば話すときに自分もわかりやすくなるだけではなく、

事前にアウトラインを読むであろう試験官にも話の基礎を伝えることができ、

試験官の理解度UPや質問の精度を上げることにもつながるはずです。(勘)

 

ちなみに葉山は要点を書き出した後、これを繋げるように喋りながら

「これは喋りで言いたいなー」と思ったことをメモ書き程度に連ねてました。

(文章で書くと出る「読み上げている」的な責任感が自分は苦手でして……。)

あくまでも喋る時のメモなので、文章にする必要は全くないです。

 

 

実際の試験を受けた感想

 

すごく昔に試験を受けた(およそ一年前)ので、覚えていることは少ないですが、

実際の試験の雰囲気や進行(?)についてご紹介しておきます。

 

・葉山の場合の試験官は授業を実際に担当してくれている先生でした。

おそらく他の学校の皆様も、試験官は先生になると思います。

「内部評価」なので。

 

・以下の要項が指導の手引きにて制定されています。

抜粋は注意書きなど書き込みのないものでなければならず、生徒が個人口述の場に持ち込めるのは、抜粋とアウトラインのみです。

ということで、実際の試験に持ち込みができるのはアウトラインと抜粋のみです。

どちらも書き込みは厳禁。

葉山の学校は事前に試験用のテクスト / アウトラインが印刷されて(wordで作ったので)

配布されたのですが、

この時「絶対に書き込みはしないでください」と強く念を押されたのを覚えています。

 

口述試験は「10分のスピーチ」+「5分間の質疑応答」になります。

どうやらSelf Thoughtの人たちは「15分」フルでスピーチするらしいんですけど。

(Self Thought = 海外のIB校などで、その科目を教えることができる先生がいない場合、

生徒は自主的にその授業の勉強をする必要があります。

例えばアメリカのIB校でJapanese A を教えられる先生がいない場合、

その生徒はJapanese A の内容を自習して試験に備えなければなりません。)

 

・時間は先生がちゃんとみてくれるので安心して話してOK。

ただし、時間オーバーだと強制的に止められます。

時間が余ってしまった場合は、作品の主題を再度強調してみたり、

グローバルな問題と作品抜粋の関連性について説明してみたりなどなど

できる限り情報を押し込んでみるのもあり。

ですが言語や構成で点数を引かれがちなので、

練習の時から「10分でアウトラインを喋る」ことを意識しておきましょう。

 

・ちなみに人間の心理的に、緊張する場面だと早口になる習性があるので

例えば「9分半」で終わってた人なら、本番は「9分」で終了、なんてこともあり得る。

だからと言って10分ジャストで喋れるようにしておけというわけではなく。

目安的には「9分半〜45秒」くらいがいいんじゃないかな、と思います。

構成に余裕がある人は、一文ほど調整ルートを作っておくと吉。

 

・葉山の学校だけかもしれませんが、

試験官はチェックリストを手元に用意しながら話を聞いていました。

チェックリストの内容は、「グロ問を話したか」「作品に言及したか」など基礎的なものは勿論、

フィラーが入っていないか」「スムーズに喋れているか」など、口述的な側面もあったかと思います。

断じて葉山がじっくりチェックリストを見ていた、というわけではないんですけど、

試験官も試験官なりに話の抑えるべきポイントを意識して聞いているということで。

逆に書けば、それらがちゃんと伝わるような話し方をすれば、好印象なのかな、という所見。

 

・5分間の質問は、基本的に先生が「足りない」と感じたことを聞いてくれます。

答えられなかったとて減点対象になることはありませんが、

答え方によっては加点に繋がることがあります。

おそらく質問は、先述したチェックリストでチェックできなかったものを中心に行われるはずなので、

頭フル回転で答えましょう。個人口述では、ここが一番の踏ん張りどころです。

 

・口述ではあれど「試験」の一環なので、本番は録音機能を使って

皆さんの口述内容を録音しています。

バックアップの関係で、試験官の端末(几帳面な先生だったので確か2台使ってた)

+生徒のPC(これは試験官(先生)のアナウンスで持ってきたもの)で録音してました。

 

・録音の都合上、極力雑音が入らないようにしなければなりません。

ので、録音始めた後に「よっしゃ頑張るぜー!」とか

録音を止める直前に「終わった……。」とか呟いてしまうと、

その音声も採点対象に入ってしまい、減点の可能性があります。

録音を始めたら、そして、録音が完全に止まるまで、関係ないことは喋らないことを徹底してください。

 

・あとこれは葉山の実体験なんですけど、

試験官の目をずっと見ていると緊張するので見ないほうがいいです。

ずっとアウトライン見ててください。

葉山は5時の町内放送の影響で、それがなり終わるまでの3分間

試験官と見つめ合う異常事態に巻き込まれてしまった結果

一気に緊張が高まって呂律が回らなくなったことがあります。

これが最終試験だったのですごく悔しかったです。

皆様にはこんな経験して欲しくないので! 気を付けろください!

 

・これも葉山の実体験なんですけど、

最終試験であれど、練習であれど、終わった後に先生からのフィードバックがありました。

そこで「これ言っときゃよかった」とか「あれ失敗した」とか後悔します。

めちゃくちゃ傷つきます。

完璧にできる人間はいません。しっかり受け止めてください。

最終試験の場合なら、もう取り返しはつかないので、諦めて外部評価課題に注力してください。

(葉山はそんな感じで口述試験詰んだと思っていたので

ひたすら苦手な Paper 2 をやりまくって点数底上げしました。)

 

 

 

実際にアウトラインを作ってみよう

 

ここまで偉そうにいろいろと語っている葉山ですが、

最近文章書いてないのでうまく伝わっていないところがあるかもしれません。

そのため、実際に作品を引用しながらサンプルでアウトラインを作ってみようと思います。

単純に葉山が頭を動かしたいだけです。

 

なお、葉山は学校の個人口述で9割を取ってますしFinal Examでもそれなりの点数を取っていますが、

最終試験のIOAが一体どれくらい取れていたのかよくわかっていません。

最後に個人口述してから一年経ってるので、かなり衰えている部分もあるかもしれません。

ので、このアウトラインが8割9割取れてるものではない可能性もあります。

過信は禁物です。

謙遜。

 

 

では、文学テクスト「織田君の死」を基準に

実際にアウトラインを作ってみよー。

 

 

作品理解

 

絶対他のDP校で扱わないと思われる短編作品を持ってきただけなので!

実際に葉山が授業内で詳しく分析をしたわけではないです!

ただ葉山が好きなだけで!(某文豪アニメから日本文学沼に使っている者)

 

 

そもそも太宰オタクである葉山は

「太宰作品は全て太宰の悔恨が反映された日記のようなものに過ぎない」と考えているので

今回もその視点を使ってしまうと、ただの

「織田の死に対して憤りを覚えた太宰の独り言」になってしまいます。

まぁその側面も確かに強い文章なのでしょうが、

あくまでも今回は「文学テクスト」として分析しなければならないので、これはパスしときます。

 

まず、文学テクストの形式ですが

「物語」とするには現実味が強く、作者の感情がイキイキと伝わってくることから

ノンフィクション、現代との繋がりがかなり深いものと推察できます。

この辺の深いジャンル名について、今回はあまり考えません。単純に考えるなら「手紙」とか?

 

大抵の文学テクストなら「物語」か「詩」になるんじゃないでしょうか、これが特殊なだけで。

 

そしてテーマとしてあるのが「織田の死」。

織田、つまり織田作之助ですね。 葉山は中学生の時に天衣無縫を読んだことがあるのですが、

全く意味がわかりませんでした。また時間を見つけて読み返してみようと思います。

某文豪漫画の織田もイケメンですが、本物も全然イケメンですね。愛妻家、と。(別に意味はない)

 

背景知識をつけるためにWikiで調べてみたのですが、

織田の死因は「結核」だそうです。当時で言うところの不治の病ですね。

この時期の著名人の多くは、おそらく結核が原因で亡くなっているはず。樋口一葉とか。

なら結構自然な死だったのかな、と思ったんですけど、

織田君は死ぬ気でいたのである。

青空文庫掲載 太宰治作「織田君の死」より抜粋)

冒頭一文がこれなんですよね。矛盾……?

 

 

と思っているとこんな記述も。

一緒に持ち歩いていたライターや注射器(結核治療用の抗生物質を打つため。ただこの注射器を使ってヒロポンを打っていたとも言われている)(以下略)

織田作之助 - Wikipedia  より引用)

ここに記述されているヒロポンというのが、現代では覚せい剤取締法で規制されるほどの薬だそうで。

あまり文学批評であれど、こういう言葉を書くのはよくないと思うので慎みます。察しろ。

要するに、太宰の指摘はあながち間違いではないのかもしれないというわけで。

 

 

そして面白いことに、

坂口安吾の「反スタイルの記」では、ヒロポンを常用していた様子が描写されている。またこの文章は作之助が死去した年に執筆されており、結核による喀血も同様に描写されている。

という話もあるらしいです。

つまり、織田の「生」に対する苦悩は、織田が生きている間はあまり多くの人に知れ渡っておらず、

逆に織田の仕事、安吾の作品によって織田作之助という人物像がより深まったという可能性も

十分あり得るというわけで。

ちなみに「反スタイルの記」も青空文庫で読めました。

↓リンク貼っときます。

www.aozora.gr.jp

 

 

なんか熱く語りすぎたような気がしますが、背景知識はこんなものにして。

今回は、そんな織田作之助という一人の人間の死に対して

太宰治が何を考え、感じていたのかというのを分析するのが

この文学テクスト分析の最終的なゴールになります。

 

 

作品の主題・テーマを考えよう

 

前置きが長くなりすぎたので

さっと話の内容を要約しながら、作品のテーマや主題について考えてみようと思います。

太宰治の短編作品「織田君の死」は、同時代の作家であり友人でもあった織田作之助の死を悼むエッセイ的な文章です。この作品では、太宰が織田作之助との出会いや彼の印象、そして彼の死について語っています。

織田作之助について、太宰は「なんてまあ哀しい男だろう」と評し、その生き様に深い共感を示します。織田は過剰な飲酒や薬物使用などで命を削りながらも創作に没頭しており、彼の死はそのような生き方の延長線上にあったとされています。

また、太宰はフランスの作家セナンクールの言葉を引用し、「世間が死を愚かな行為と批判する一方で、その同じ世間が人を死に追いやる」という矛盾を指摘しています。この言葉を通じて、織田君を追い詰めたのは社会の冷酷さや批判的な態度であると暗に述べています。

この作品は、単なる追悼文にとどまらず、文学者としての苦悩や社会との葛藤を描き出したものでもあります。太宰自身もまた、織田と同じく「命を削るような創作」を続けた作家であり、その視点から語られる内容には、自己投影的な要素も見受けられます。

時短のためにAIに作らせました。本当は絶対やっちゃいけないことだけど。

AIすごいですね、言いたいこと全部まとめてくれた感。技術ってすげぇ……。

(こういうことするから脳が衰退するのです)

 

さて、AIの要約をもとに作品のテーマと主題を考えてみましょう。

 

タイトルからなんとなく察すると思いますが、この作品は明るいテーマを扱っているわけではないです。

織田作之助の死を扱っているわけですから、作品の雰囲気は暗くなるはずで。

にもかかわらず、

 

 

織田君! 君は、よくやった。

 

 

なんて素晴らしい肯定文……!!

葉山も太宰にこう言われたい人生でした……。(何言ってんだこいつ)

 

 

 

こんなにも重く暗いテーマを扱っているはずなのに、

一貫して太宰は激励と共感に似た同情を向けているのです。

葉山はこの不一致こそが、この文学テクストの価値を成しているものだと考えます。

 

 

ではまず、太宰は織田の何に同情したのか。

きのう読んだ辰野氏のセナンクウルの紹介文の中に、次のようなセナンクウルの言葉が録されてあった。

「生を棄てて逃げ去るのは罪悪だと人は言う。しかし、僕に死を禁ずるその同じ詭弁家が時には僕を死の前にさらしたり、死に赴かせたりするのだ。彼等の考え出すいろいろな革新は僕の周囲に死の機会を増し、彼等の説くところは僕を死に導き、または彼等の定める法律は僕に死を与えるのだ。」

織田君を殺したのは、お前じゃないか。

彼のこのたびの急逝は、彼の哀しい最後の抗議の詩であった。

 

もうAIが答えとなりそうなものをまとめてくれていたので結論から書きますが、

太宰が織田に同情した点として、

 

「社会の冷酷さ、批判的な態度」だと考えます。

 

現在でもマイノリティに対する風向きが強かったり、

下請け会社は名前からして下っぽいから改名しよう、など

上下の差(身分や階級、所得にかかわらず):格差を感じる風潮はあるように思います。

今回の一文をかなりわかりやすく噛み砕くと、

 

「『自分が発信した意見や考えって、結局他人に批判されるよね。

それって、一見すれば改善策や応用に使える革新的なものだけどさ、

結局そうやって意見を変えちゃうとさ、自分が曲がっちゃうんだよね。それが辛いよね。』

 

__って、お前言ってたけどさ。

お前らがそう言ってる時点で批判してるじゃん? お前らも人のこと言えないじゃん?

このクソやろーっ!!!」

 

ってことです。多分。葉山の解釈てんこ盛りですが。

 

葉山も中学の時にいろいろと危うくなった事があるのでこの気持ち痛いほどわかるんですけど、

生きてんのどうでもいいや、って思ってる時に

「生きろ」って言われるのすごく無責任だなって思うことがかなりあって。

別に一緒に心中しようとかそういうことを言いたいわけではなく、

ただ「そっかぁ、しんどいねー」って言って背中を預けてくれる方が、葉山は安心したんじゃないかなー。

夢想論ですが、今でもそうなったらいいなーって思う時があるくらいには強い個人の意見。

 

はい、自分語りはどうでもいいのでこの辺で慎みます。

要するに、生きること、働くこと、などなど当たり前になっている社会の規範を守るために

個人の尊厳や感情が批判されてしまう事があるってこと。

こうありたい、でもこうなれない、代わりにああやって生きなくちゃいけない。

そんな「所在のない義務感」が押し付けられてしまうと、苦しいって事なんじゃないかなぁ。

 

ここで作者:太宰治の背景情報ですが

太宰の最後の作品として名高い「人間失格」。

あれは太宰の遺書だって葉山は解釈しているので、そのスタンスで書き連ねると、

太宰本人も自分の生き方やあり方に少なからず葛藤していたんだと思います。

それは人間失格で言うところの「ひょうきんものを演じ続けなければならない自分」や

「津島家の秀才としての面目」(津島じゃなかったかも、津島修治から取っただけ)

そういった肩書きや義務感に縛られて悩んだことが多くあったんだろうな、と。

人として生きると、どうしても悩みや苦しみが現れてしまうものですが、

太宰のそれは、まさに織田の苦悩と似通っている部分が多くあったのではないのかな。

 

 

今回はその似通っている部分を、キーワードの「所在のない義務感」としておいて、

テーマはおそらく「自らの声を発せられない社会」。

主題は「批判主義の社会への反発、抗議」とでもしておきましょうか。

 

 

グローバルな問題を設定しよう その2

 

この前後輩と話していて感じたのが、

「これがキーワードだ」と思っているものはあるのに

それを「グローバルな問題」に繋げることが難しいんだ、ということ。

 

確かに作品体系や主題を分析する中で出てきたキーワードってたくさんありますが、

それが「課題」なのか、さらに書けば「グローバル」な問題になるのか。

 

難しいこと言いますよねIB……。

 

 

ではこのグローバルな問題を、さっきの流れのついでに解決しようと思います。

改めてテーマを持ってきておくと、

「自らの声を発せられない社会」でした。

もうこれだけでかなりグローバルな問いになりそう。

言論弾圧とか奴隷制度とか、いろいろ使えそうなものはあるかと思います。

 

ここでワンポイントを置くならば、

テーマって偉そうに書いていますが、

テーマというより「作品が位置している領域」的なものだと思っていただければいいかな、と。

作品の背景や、作者の主張が行われた原因にある世界観、および世界観が持つ現状を

テーマに据えているようなイメージです。

「現状」って書きましたが、そこで当たり前に広がっている日常風景的な。

ので、世界観理解のために置いているだけ。

別にそれが「課題」になっていても、ディストピア小説みたいに「当たり前」になっていても

構わないと思います。個人的には。

「課題」と捉えられる方がグローバルな問題に繋げやすいかも……。

 

でも今回はテーマではなく、キーワードで考えていくことになっているので、

「織田君の死」を分析した時に発見したキーワードを、いくつか並べてみましょう。

この時のキーワードは、「この言葉がないとこの作品は説明できない」的なやつです。

 

  • 同情、激励
  • 義務
  • 規範
  • 社会にとっての「当たり前」
  • 固定観念(?)→所在のないもの、浮遊した概念的なもの

 

ここで使うキーワードは、自分が確実にわかっているものがいいです。

見返した時に「偏重」とか「慇懃」とか書いてあると「何ソレ……?」状態になるので。

 

このキーワードを軽く分類してみると、

「同情、激励」は作者のアプローチなので、どちらかと言えば

作品が持つ主題(グローバルな問題?)に対する作者の見解で使えそうです。

それよりも、この作品を象徴しそうなキーワードを探してみると、

「社会にとっての『当たり前』」「固定観念」が当たるかな、と思います。なんとなく。

 

これらのキーワード・課題によって作品背景が形成され、作者の見解がもたらされる。

そんなサイクルを回す時の起点になる「現状」的なものを探し出すといいでしょう。

もろテーマと一緒ですね。

 

※織田の物理的死因は結核ですが、あくまでこの文学テクストが

「織田君を殺したのは、お前じゃないか」と、人間的・社会的 要因を原因としているため

これを「作品背景」と称しています。

 

てな感じでキーワードが見つかったので、

これを「原因」→「結果論」のフォームに落とし込んでいきます。

個人口述に限らず、結論と原因は明確に示すべきだという万物理論に乗っかってます。

今回の文学テクストで見つかった原因は「社会の当たり前」(〜がもたらしたもの的な。)

そして、結果として発生したのが「(織田君の)苦痛」とできそうです。

「死」でもいいんですけど、そうするなら「作家としての死」となってしまうので

(格好良く書いただけ。あるいは特定の規模・領域での話になってしまうため。)

ここでは「苦痛」とかなりオブラートに包んだ言い方にしてみました。

 

ちなみに探究領域と合わせて考えるなら、

1:コミュニティ と合致しそうです。それに沿った話ができたらいいですね。

探究領域についての文も過去記事から引用しておきます。

 

 

音楽でも知識の領域、通称AOKが存在しましたが、Japanese Aにも存在します。

  1. 文化、アイデンティティ、コミュニティ
  2. 信念、価値観、教育
  3. 政治、権力、正義
  4. 芸術、創造性、想像力
  5. 科学、テクノロジー、環境

 

この5つと関連するグローバルな問題を立てると、やりやすいです。

【IBDP】 Japanese A の評価項目:IOA(個人口述)って? 高得点を取るコツは? - IBDP体験記 現役DP生が 国際バカロレア を解説してみた

 

 

こんな感じで、グローバルな問題が完成。

「社会の『当たり前』がもたらす『苦痛』」です。テッテレー

 

このグローバルな問題ですが、

「(原因)がもたらした / もたらす(結果)」

「(理想)を阻む(原因)」

「(原因)が生む(現状・結果)」

みたいな構文がかなり使えます。

エモいタイトルみたいなやつで「犬と僕」みたいな「〇〇と△△」構文も見かけますが、

因果関係がぱっと見でわからないので個人的にはあまり好きではないです。

あくまでも「問題」となっている事柄が明確になるように書きましょう。

 

非文学テクストを探す

 

葉山はSelf-Thought の人間ではないので申し訳ないですが、

ここから後半戦の要を握る「非文学テクスト」を探していきます。

 

これはグローバルな問題を軸に考えて行った方が楽です。

おそらく前回の葉山はこれを主張したかったんだと思います。

 

今回のグローバルな問題は「社会の『当たり前』がもたらす『苦痛』」とのことで

コミュニティの中に存在するマイノリティ・少数派などを象徴できるような

非文学テクストを探せたらいいですね(他人事)。

 

ここで非文学テクストをこれって決めるために、

まずは非文学テクストにするテクストを決定します。

 

非文学、ですので文学じゃないテクストを持ってきます。

具体例を挙げてみますと、

  • 広告
  • 新聞記事
  • 社説
  • 意見コラム
  • 解説本
  • 映画

などです。

【IBDP】 Japanese A の評価項目:IOA(個人口述)って? 高得点を取るコツは? - IBDP体験記 現役DP生が 国際バカロレア を解説してみた

 

非文学テクストは、扱うグローバルな問題に合わせて選択するのが無難です。

例えば今回の「マイノリティ」を象徴できるような非文学テクストとして、

  • マイノリティの問題意識を提唱する広告
  • マイノリティの現状を独自取材した新聞記事、社説
  • マイノリティに対する現状に対する筆者の主張がまとめられた意見コラム

などを上げることができそうです、よね。(不安)

 

でもこれって、考え出したらきっとキリがないので。

こういう時に便利なのは、

「自分の得意な非文学テクストで戦う」です。

葉山の場合だと広告ですね。

社説が得意とか、映画分析をよくするFilm民だったら映画分析をやりたいとか、

個人の得手不得手に合わせて選択するのが良いでしょう。

その得手不得手を模索するために、今まで散々IOA練習したのだと思うので、

自分が「これなら自信ある!」と思う非文学テクストのタイプで探してみましょう。

 

検索の仕方は人それぞれなので特に具体例は出しませんが、

今回は単純に「マイノリティ 広告」で検索して出てきた

パンテーンの広告を持ってきてみました。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000042936.html

 

非文学テクストの概要を理解する

 

ではここから、特定した非文学テクストの概要を探っていきましょう。

 

パンテーンは、「あなたらしい髪の美しさを通して、すべての人の前向きな一歩をサポートする」ことをブランド理念に掲げています。2018年よりブランドメッセージ「#HairWeGo さあ、この髪でいこう。」のもと、就職活動における個性の尊重などをテーマに、自分らしい髪で一歩を踏み出す、すべての人を応援してきました。

(引用元URLより)

 

非文学テクストを理解する前に、広告を出稿している元会社のことを

ちょっとだけ理解してみましょう。

パンテーンという会社はシャンプーやコンディショナーのメーカーとして有名ですが、

「自分らしい髪で」というキャッチコピーからもわかるように

自らのありのままを重視する企業であることが察せられます。

逆に書けば、自らをありのままに出せないことの苦痛というものをちゃんと認識しているからこそ

これを解決するための広告やブランド理念があるわけで。

 

この「会社全体の理念と背景知識」があるだけで、

十分非文学テクストに対する理解を示すことができます。

 

さて、いよいよ広告の詳細な分析ですが、

これは主に

  • 広告の文章が持つ意図
  • 広告のビジュアル的レイアウトが持つ意図 / 相乗効果

です。そろそろ文章が長いので省きます。

 

結論

 

最後の締めは結論部分です。

ちなみに葉山の先生曰く「あくまで IOA は各テクストがグロ問をどのように表現しているかなので

まとめは書かなくてもいいんだけどさー。

でもいちおー口述だし? まとまりよく終わるにはまとめがあった方がいいよね。

別に減点にもならないから、構成とか流れを考えるならあってもいいんじゃないかなっ!」

とのことです。

 

なので、そこまで凝ることもなく今まで話したことをまとめる程度でいいと思います。

 

そんなこんなで分析終了。

アウトラインの80字を意識しながら箇条書きにまとめると、こんな感じ。

 

テーマ「社会の『当たり前』がもたらす『苦痛』」

使用テクスト:「織田君の死」(太宰治、1940年)

      :パンテーン企業広告『#Pride Hair』

  • 社会の一般的な「規範」→当たり前とされている社会 溶け込めない人、溶け込みを強要されること 『苦痛』

 

  • 文学 結核で亡くなった織田作への手紙 ヒロポン:現実逃避
  • 太宰:織田作の社会への苦痛に共感、理解?
  • 社会の冷酷な態度、固定観念に従うべき 批判が強要になる 太宰本人も同じ境遇に?→理解に
  • 当たり前=社会の慣習・固定観念 強要や観念に反するものの「批判」=自己の批判→苦痛

 

  • 非文 パンテーン「#Pride Hair」髪ケア商品を中心に展開する会社 & 自分らしさの主張を重視
  • 「髪で性別を主張」見た目での判断 就職活動などの「社会規範」 沿わないもの=社会の当たり前と苦痛
  • 服&イヤリング&背景の白 コントラスト 男性らしさ / 女性らしさ ありのままを表現する髪と見た目のあり方
  • 当たり前にとらわれない生き方をするための手段、あり方の提案

 

  • 当たり前:規範や固定観念 批判されることの「恐怖」「苦痛」  文:規範をもとにした批判と自己の批判の類似 非文:批判から生じる苦痛と解決法の提示

 

だいたいこんな感じになると思います。

テクスト分析の内容が全部書いてあるかと問われればそうでもないので、

6〜7割くらい取れそうなアウトラインになってるかと思います。

 

 

まとめ

 

ということで今回は、日本語A内部評価、IOAについて実際にやってみながら考えてみました。

ほぼ太宰オタクが太宰作品を分析しただけになってしまったんですけど。

 

IOA なんぞや、って人に向けて

アウトラインの作り方とか分析の仕方とか、いろいろ参考になったらいいな。

 

 

それでは長文失礼しました。

ではではー